ペースト肥料とは一定の粘性を持たせた高濃度の液状肥料で、水中に滴下しても通常の液状肥料と比較して拡散しにくいことが特徴です。畑用のものもありますが、ほとんどが水稲の基肥用として使用されています。
ペースト肥料は植え付けと同時に、苗の脇にノズルで溝を切りながら土中に埋設施肥します。根の近くに液状肥料を埋設するため、苗の活着や初期分げつを確保したい場合に有効です。
施肥位置は、苗から水平方向に上段2㎝、下段15㎝であり、施肥深度は農機メーカーによっても異なりますが、上段3,5,(7)㎝、下段9,12,15㎝から選択します。施肥深度を変えることで肥効の発現時期を調節することができ、寒冷地や中山間地などで初期生育を重視する場合は施肥深度を浅く、後半の肥効を重視する場合は施肥深度を深く設定します。
大型規格×ペーストチャージャー補給による軽労化
ペースト肥料の規格には20㎏の他にタンク大型規格(500㎏、1t)があります。タンク大型規格はペーストチャージャー(エンジン式モノフレックスポンプ)で田植機に肥料を補給するので、肥料重量物を手作業で運搬する必要はありません。
高密度播種苗×ペースト二段施肥(大型規格)の実証試験では、慣行苗×粒状側条施肥の体系に比べて苗と肥料の補給時間は12%、運搬重量は63%減少し、高密度播種苗とペースト二段施肥の軽労化メリットが高いことがわかっています。
グリーンレポート622号(2021年4月)掲載
プラごみの削減
ペースト肥料大型規格のタンクは当社が回収、再利用するため、プラゴミが発生しません。 30haの水稲栽培において、粒状肥料を2袋/10a使用する場合、合計600袋(48㎏)の廃プラ削減が可能となります。※1袋あたり80gとして計算。
2袋/10a使用する場合、30haの栽培面積で
計600袋(48kg)の廃プラ削減に!
雨天時の施肥・田植
ペースト肥料は液状なので、雨天時の田植作業でも肥料詰まりの心配がありません。そのため計画的に田植作業を進めることが可能です。
マイクロプラスチック(以下MP)は、5mm以下の微細なプラスチック粒子のことで、人間の経済活動を通じて、河川や海洋に流出していることが問題となっています。
水稲用一発肥料は、プラスチック樹脂等の被膜をコーティングすることで施肥回数減による軽労化、施肥量の削減、養分の流出防止などの利点を持ったものが広く普及しています。農業由来のMPを削減するため、プラスチック被覆殻の流出防止対策とともに、代替技術の開発と普及が必要になっています。
被覆殻
水田水尻に集まった被覆殻
用水路まで流出した被覆殻